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第44回中高研究集会
講演 生徒の心の問題の兆候・発題要旨―講演をめぐって

NOといえる真の仲間作りを教える
安河内 敏

 2001年9月11日。この日は世界の歴史上忘れられない同時多発テロの起きた日です。

 同じ日、私たちの北星学園余市高校でも、学校の存続を揺るがす「薬物事件」の取り組みが始まった日でもあります。現在日本では「第5次薬物汚染期」と呼ばれる時期にあるのですが、このことは多くに人たちにはあまり意識されていません。まさに日本の将来を揺るがすこの事態が進行しているのです。

 私たちも今回の事件が起こるまでは、あまり意識していませんでした。なぜ日本の将来を揺るがす事態なのか。そのように考えるのは大げさなのか。実態を知れば知るほど決して大げさではないことがわかってきました。この「第5次薬物汚染期」の特徴は高校生に広まっているところにあるのです。それどころか、年々進行して、今や中学生、小学生にまでその魔の手は伸びてきています。

 このことを大人たちは「まさか」と思い、もし身近に起こったとしても、特殊な事態として処理しようとしているように思います。それは「やくざ」「暴力団」といったイメージから、普通に生活している人にとっては別の世界のことであり、一種の恐怖から薬物の使用を抑制する働きがありました。

 しかし近年ではこうした意識が非常に有効な隠れ蓑となって、むしろ薬物の浸透を水面下で加速する結果となっています。大人が薬物を使用した場合、逮捕され刑務所か良くても社会的地位を失うというリスクを誰もが考えます。しかし子供たちにそのことは大して重要なことではありません。仲間意識や、快楽の方が重要な要素なのです。警察が子供たちを薬物で補導、あるいは逮捕しても学校には知らせませんし、もちろんマスコミにも知らせません。将来ある青少年として当然の処置とされますし、もし学校に知らせれば、ほぼ退学になることがわかっているからです。また中学校などであったとしても教育現場でそのことをフォローするシステムなり力量がないことも確かなことです。

 仲間内で伝染病のように広まっていくこの減少を食い止めるのは、まず教育現場に薬物が持ち込まれているということを強く認識して、目の前にあっても仲間がやっていてもNOといえる真の仲間作りを教えていくことから始めなくてはならない事に気づかされました。自分の教えている子どもたちが本当の仲間同士だという意識を得ているのか。教師サイドから見た場合、単純な問いのようであって、しかし胸をはって「そうだ」とは言えないことの多い深い問いなのだと思うのです。 

 今まで薬物の恐ろしさを教えることはあっても、もし、自分が、友達が関わっていたらどうする、というつまりはホームルーム作りという観点でこの問題をとらえてこなかったのだと思います。また薬物があるという意識がなかったために、教育現場ではこの問題に対処するシステムがほとんどありません。今後はこうしたものが緊急に必要になってくると思われます。

〈北星学園余市高校教諭〉
キリスト教学校教育 2003年5月号3面


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