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関西地区・夏期合宿カウンセリング研修会
学校現場で生かすカウンセリング
北井 香奈江

 関西地区夏期合宿カウンセリング研修会は、講師に上野和久先生を迎え、8月18日から22日まで長野県北安曇郡美麻村にある民宿「やまじゅう」で行われた(参加者21名)。テーマは「学校現場で生かすカウンセリング」である。教職に就いておられながらカウンセラーとして活躍なさっている上野先生から、現状に即した問題解決の方法を懇切丁寧に教えていただいた。非常に密度の濃い研修となった。

 今、教師には、教科指導における専門知識や技術だけでなく、子供の成長プロセス(心の働き)を理解し説明できる専門知識や技術が必要とされている。教師は集団から個人を見る視点、個人から集団を見る視点の両方を持たなければならない。その視点を得るための方法を、時には身体をほぐすリラクゼーションも交えながら、体験型のワークショップとして展開してくださった。

 教師と生徒、および生徒同士のコミュニケーションを活発にすることによって無意識の部分を意識化できる。それが「気づき」となって成長を促すのだが、そのためには、まず、自分自身のコミュニケーション能力を高めなければならない。驚いたことに、言葉によるコミュニケーションの有効性はわずか7パーセントに過ぎないという。つまり、私たちは言葉以外のコミュニケーション(ボディランゲージや声のトーンなどによるもの)能力を磨く必要がある。

 初めに、生徒が教師に向かって発している信号を敏感にキャッチできるように観察力のチェックをした。自分の目に映った色や聞こえた音を相手に伝える、というゲーム形式である。五感を駆使し、対象をリアリティーをもったものとして捉えるための訓練である。

 さて、他者を理解するためには、自己理解が出来ていることが前提になる。自己理解の方法として最初に「バウムテスト」を行った。まず、右手で実のなる木を1つ描き、その後に左手で描いてみる。不思議なことに、左手で描いた方が素直に自分が出ていたように思われる。作為的な力が働かないためだろうか。

 次にSPトランプを用いた性格分析。これは2人1組で行う。「思いやり君」「さみしがり屋」「社交家」など、様々な性格が書かれた52枚のカードの中から自分自身の性格を10枚選んでそこに表れた自分自身を見つめる、というものである。まず、自分自身で7枚選ぶ。そして、3枚を他者に選んでもらう。カードを選んだ理由を互いにシェアする中で、自分からみた自分、他者から見た自分が認識されるようになる。その後で、自分の好きな性格と嫌いな性格を10枚ずつ選んだが、そこにも「自分」がしっかりと現われていて興味深かった。好きな性格は過去の自分であったり、嫌いな性格は自分自身の嫌いなところであったり。今の自分を自身がどのようにバランスをとって支えているのかが見えてきたセッションであった。

 「無意識の意識化」がどういうものかわからなかった私に、上野先生は被験者としての体験をさせてくださった。そのおかげで、「気づき」ということがどのような過程を経て行われるか、おぼろげながら理解できたように思う。自分自身の無意識下にあったものを認識することで、今まで意識にあがってこなかったものが見えるようになるのだ。

 「気づき」のワークの最後に、参加者からの要望に応えてくださることになり、「小石のワーク」を行った。余談だが、参加者がこのように研修内容を決めることができるというのが、この研修会の素晴らしいところである。このワークのために、上野先生自ら、早朝から近くの川から小石を拾ってきてくださった。その中から各自が選んだ小石を眺めながら、小石のたどってきた人生を想像してみるという、なかなか楽しいものだ。「山頂にある大きな岩の一部が欠けて谷川に落下して、小石の旅が始まった。そのときにできたのがこの傷で・・・」と歩んできた道のりを好きに空想する。ストーリーの中の小石は、やはり、自分と重なるのだ。

 石を擬人化することで自分の側面が見えてくる。また、たとえとして抽象化することにより、傷に深く触れることがない。このワークで、「気づき」における具体化と抽象化の重要性を示してくださった。

 「気づき」とは無意識の意識化である。意識化のためには気づいたことを互いにシェアするという双方向のコミュニケーションが大切になる。自分からも他者からも見えない未知の領域を意識化していくことにより、自己理解が深まり、それにともなって他者理解も深まる。私は研修会で得たものをゆっくりと消化しつつ、学校生活で生かしていきたい。

〈梅花高等学校教諭〉
キリスト教学校教育 2003年11月号4面


キリスト教学校教育同盟