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第46回学校代表者協議会
主題 「今日におけるキリスト教学校の教学と経営」

基 調 講 演
キリスト教学校の教学と経営 ―高等教育を中心として―
佐藤 東洋士

 今年度の総会の後に同盟事務局から、第46回学校代表者会の主題が「今日におけるキリスト教学校の教学と経営」であり主題に即した話題提供を行うようにとのご指示がありました。お引き受けはしたものの、私の主たる働きの場は学園の内外共に大学世界ですので、発題は高等教育を中心としてとしましたがご理解いただければ幸いです。

 桜美林学園の教育理念は、今から八十二年前の一九二一年に北京に設立された崇貞学園に遡ります。学園の創立者清水安三先生は十六年前に九十六才で召天されましたが、一八九一年生まれの滋賀県の出身です。先生は、ウィリアム・メレル・ヴォーリスの影響で牧師となり献身することを決意し同志社大学を一九一五年に卒業し、一九一七年には組合教会の牧師として中国の奉天に派遣され宣教活動を始めました。

 清水安三先生は、当時中国北方五省は飢饉に悩まされていましたが、宣教活動の一環として救済施設「災童救済所」を設置し多くの児童の救済にあたりました。この災害救済施設運営の体験から中国の子供たちに「手に技術を附けさせながら学問をさせる」ことを意図して一九二〇年にキリスト教主義学校「崇貞工読学校」を、そして翌年一九二一年五月二十九日には「崇貞学園」を設立したのです。

 歴史的に見ると、当時の中国ではアメリカ人をはじめとし、多くの外国人による学校の設置が行われていました。日本人も、清水先生以外にも東亜同文書院や建国大学などを設置しましたが、主に日本の国益の為に設置されたもので、清水安三先生のみが中国人の為の学校を設置したと言って過言ではありません。

 崇貞学園は発展をし、一九四五年には「一万一千坪の校地に大小二十二の、校舎、図書館、理化学館、体育館、チャペル等」からなるキャンパスとなっていました。しかし、日本の敗戦により日本国政府東亜省の認可を受け日本人の手によって運営されていた「崇貞学園」は中国政府の管理下に置かれる事になり、清水先生は日本に帰国を余儀なくされたのです。

 清水安三先生は、一九四六年三月十九日に帰国、五日後の三月二十四日には賀川豊彦先生の仲立ちで現在キャンパスがある場所で、学校を復興させることになりました。そして五月二十九日には二百十四名の生徒を得て、学校は再開されました。桜美林は、この時から数えて五十七年を経過しましたが、崇貞学園から数えると八十二年が経過しました。

 さて、現在わが国では、再構築という名の教育基本法の改正・教育振興基本計画の策定等々、戦後最大の教育政策の転換が行われているといっても過言では有りません。

 高等教育においては象徴として、国立・公立大学法人化が進んでいますし、設置認可行政の変質により、設置目的に適合していれば、教育の内容に踏み入った審査は効力が失われていることにより、高等教育分野内でのすみ分け構造の崩壊が起きています。

 補助金行政もアウトカム・アウトプットを評価することに支点が置かれ従来とは大きく変化しようとしています。まさに、共存から競争へと移行しているといえましょう。
 この、大転換の背後にある潮流として次の項目を挙げることができると思われます。

・三つのメガトレンドとしては@マス化、A市場化、Bグローバル化です。

・三つのナショナルトレンドとして@少子高齢化、A経済の構造変化、B行財政改革を上げることが出来るでしょう。

 マス化については、すでに高等教育への進学率では約五〇%でユニバーサル化していますし、中等教育を含めて学校教育は飽和状態になっており、生涯学習社会へ移行しようとしているといえます。

 グローバル化についても、国連が実施をした先進諸国の移民の受け入状況についての調査によると、日本が一九九五年の経済活動の水準を維持していこうとする場合、今後、労働人口を確保するために五十年間に渡り毎年六十万人ずつ外国から労働移民を受け入れなければ、日本は立ち行かないという内容でした。中曽根内閣が世界貢献を目指して、留学生十万人受入れ政策をうち出してかなりの年月が経過しました。長年掛かってようやく、実現したのが今年ですから、毎年労働移民を六十万人受け入れるというのは想像の範囲を越す数です。この一九九五年の経済活動を維持しないと仮定しても、低出生率の中で今日の人口水準を維持するためには、年間四十万人程の移民を受け入れないと人口維持は不可能であると報告は結論づけています。つまり、極端な老年社会を目前にしてグローバル化をしないと社会保障を支える展望は開けないとの警鐘を国連がしたといえます。

 少子高齢化についても既に、ゼロ歳から十五歳未満の年少人口の割合を六十五歳以上の老年人口の割合が越し、国民総人口は低出生率を反映して減少期に入りつつあります。したがって、学校教育の規模縮小や競争の激化は、今後ますます顕著となってくるといえましょう。

 経済の構造変化については、言うまでも有りませんが低成長の中で産業や職業構造が変化し、雇用についても若年層の失業やフリーター志向、離転職に対する対応、教育訓練の外部化等々が問題となっています。

 行財政改革についても、キーワード的に論点を並べると、緊縮財政・白主財源・受益者負担・重点配分・競争的配分・説明責任を上げることが出来るでしょう。

 このような大きな転換期に、キリスト教学校の教学と経営をどのように調和させるかは一概には言えませんが、中長期的視点から自らの位置を確認し、「Mission」、「Vision」、「Value」を明確にし、リーダーシップを発揮できる組織とすることが必要でしょう。

 山内一郎教育同盟理事長は、「同盟に加盟している学校を、ミッション実現のために共働する使命共同体(purposeful community)」と位置付けられていますが、同盟に加入している学校間で「Mission」、「Vision」、「Value」を共有できる学校が部分的共同化を目指すことも、有意義なことであるといえます。船本弘毅先生は「キリスト教学校は、意義ある教育を行うことによって存在の意味がある」と述べていますが、強く生き残れてこそ意義ある教育を行うことが出来ることと感じています。
〈桜美林学園理事長・桜美林大学学長〉



   コメント
西田 一郎

アカウンタビリティの問題
 @経営目的の明確化による建学の理念の具体化A教員・教授の意識改革Bスポンサーに対するコスト・パフォーマンスの説明の責任(学生、生徒、保護者、社会全体)、今まで教学型評価であったが、財政も取り込んだ総合型評価にしなければならない。

ガヴァナンスの問題
 @理事会の経営責任をはっきりさせるA学長の選任方法(学長、副学長、学科長が一枚岩になっているか)B教授会の機能の整理、特に教授会が人事権を事実上握っていることについての改革。

 どんなによい理念やミッションを抱えていても、それを実現するシステム自体が出来なければ実現は困難であることを強調したい。

〈国際基督教大学財務理事・総務副学長〉
キリスト教学校教育 2004年1月号2面


キリスト教学校教育同盟