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2004年度教研研究テーマ
人をはぐくむキリスト教学校 建学の精神を共に担う
船本 弘毅

 教育研究委員会の中央委員会は従来、三月末に行われて来たが、今年は日時も場所も変えて、一月九日と十日、東京ガーデンパレスで開かれた。三月末が忙しくなって来たということもあるが、むしろ新しい教研テーマを早く決定することによって、夏の全国研究集会や各地区また各部会の研修会に資することを願っての積極的変更であった。

 全国から集まった教研中央委員、それに今年から中高聖書科委員長も参加し、事務局も加えて出席者は総勢二十二名であった。

 いつもの如く、全委員から予め提出されていたテーマ案をひとりひとり説明することから始められたが、今年の提案と議論は建学の精神をどう生かすかということに集中した。キリスト教学校はそれぞれ建学の精神を掲げ、その理念に従って教育・研究の営みを続けて来た。それはまさに土台であり、変えてはならないものである。しかし問題は現実に建学の精神が如何に理解され、具体的に生かされ、教育共同体の共通の理念・目標となっているか否かということである。一般の教職員は建学の精神に反対はしない。しかしそれを担うのは役職者たちであって、自分には関係のないことと受けとめ、建学の精神の風化現象が起きていないかが問われているのである。

 昨年の十二月、新聞は新しい都立大学の目玉学部の理念作成を、東京都は大手予備校に依頼する考えであることを報じた。外注することによって、時代に適合した理念を見出し、志願者を集めようとする狙いがそこには垣間見られる。事情は分からなくはない。しかし、私学、特にキリスト教学校においては、順序はまさにその逆であると言わねばならない。キリスト教学校においては、先ず建学の精神や理念や祈りがあって、その願いを実現するために学校が創立され、教育共同体が形成されていくのである。

 少子化の波が予想を上回るスピードで打ち寄せ、長びく不況の下で、キリスト教学校もまた生き残りをかけた厳しい状況の直中に立たされている。その現実の中で、今、わたしたちは、変えるべきものを大胆に変える勇気と、変えてはならないものを受け入れる平静さと、その相違を正しく識別する知恵を求められている。話し合いは、キリスト教学校の教育のよって立つ基、また目指す方向という本質的な論議へと深まって行ったのは当然の帰趨であった。

 「人をはぐくむキリスト教学校」という新しい研究テーマは、このようにして決定された。近代の教育が有用な人材、エリートの育成に力を注ぎ、真の人間形成とか人間性回復の教育をなおざりにして混迷を深めているこの時代に、キリスト教学校の存在の意味が改めて問われ、その責任はより重くなっていると言えるであろう。

 昨年までの教研テーマ「共に重荷を担うキリスト教学校」を継続するようにという声も多くあったことを踏まえて、副題には、「建学の精神を共に担う」という言葉をつけることにした。建学の精神が単なる理想や一部の人が担う課題ではなく、学校につらなるすべての人によって、自分の課題として受けとめられる時、キリスト教学校はこの時代に生き生きと光り輝くことになるであろう。新しい歩みを希望をもって今、共に歩み出したいものである。

〈東洋英和女学院院長・大学学長、教育研究担当理事〉
キリスト教学校教育 2004年3月号1面


キリスト教学校教育同盟