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玉川聖学院
流れのほとりに与えられた新校舎
坂上 多津夫

 一九九九年着工以来約五年の工期を経て新校舎が完成しました。狭隘な校地の中で教育活動の質を落とすことなく工事を進めるため、工期を三期に分け、先ずホームルーム棟をグラウンドに建ててから既存校舎の解体を行うなど、生徒の空間を先に確保しながら工事を進めていきました。これは当然ながら時間も経費もかかる方法でしたが、何より在校生を大切にするという教育理念にこだわった結果の選択でした。時間がかかったことで思わぬ幸運にも恵まれました。

 まず第一基工事が終わる頃、隣接する企業の社宅の売却計画が明らかになり、学院に対し買収の打診がなされました。理事会は熱い議論と祈りにより、私立学校としての生き残りをかけたプロジェクトの延長として、将来的に必ず必要となる土地でもありましたので思い切ってこの話に乗る決断をしました。当初の建築費の資金計画ですらかなりの無理がありましたので、さらに二十億円近い資金を調達することは途方も無いことのように思えました。しかし、工期を分割していたことで設計を見直す時間が与えられ、当初地下に建設を予定していた体育館を取得する土地に建てることで工費を大幅に節減できること、さらに既存の校地の借地部分についてかねてより買収を予定して資金を積み立てていたところ、その部分が国有地となり、格安の地代で継続使用が可能になり、その資金を取り崩すことができるようになったことなど、もしも一気に全体工事を進める計画だったとしたら決して対応できなかったことが可能となりました。

 それでもまさに借金の山にさらに山を重ねる結果となり、今後の生徒の恒常的定員確保という基本的な命題が条件として課せられました。幸いにも継続して定員を上回る入学者が与えられ、学院の経営は順調に行われています。校舎が新しくなったということは生徒募集にも大きな効果があり、校舎建築に伴う資金繰りの問題も良い意味での緊張感があるせいか、熱心な教育と生徒募集活動という好ましい方向で相乗効果が見られます。

 あらためて新校舎の設計理念についてまとめてみますと、第一が大震災に耐えうる安全性の確保についてです。第二は新しい時代のニードに対する対応で、ITやバリアフリー、環境衛生への配慮でした。テクノロジーは急速に進歩していきますが、それを活用する運用面でのソフトや容れものとしての建物の対応は意外と難しいものです。今回は全ての教室等に張り巡らす情報ケーブルやそれを納める配管設備、メンテナンス空間などの所謂情報インフラの部分については先行投資として建築に盛り込み、今後の変化にも柔軟に対応できるよう配慮しました。

 第三は、生徒のための楽しい空間の確保です。狭隘な校地だからこそ建物を工夫することによって創造的で居心地のよい空間を創り演出したいと願っておりましたが、広い廊下やゆったりしたラウンジ、開放的なテラスや屋上庭園などを立体的に構成することで実現することができました。四月以来全てに新しくなった校舎で学ぶ生徒達の嬉々とした表情を見ると学院にとって百年に一度といえる今回の大事業が無事に終わり、所期の目的を達成することが出来たことを様々な形で導いてくだしました神様に感謝すると共に、与えられた施設を十二分に活用して理想の教育を行っていくことで恵みに報いるという、私たちに課せられた重い使命を痛感しています。


 
〈玉川聖学院事務長〉
キリスト教学校教育 2004年7月号4面


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