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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 一般社団法人キリスト教学校教育同盟

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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

Assocition of Christian School in Japna Since 1910

キリスト教学校教育バックナンバー

第45回学校代表者協議会
主題 「情報化社会におけるキリスト教学校教育」

発 題
わたしの体験「教育におけるコンピュータの利用」

宮寺 良平

 いろいろな教育場面でコンピュータを使う機会があり、生徒たちが楽しみながら能力を伸ばしていく場面に出会いました。これらの経験は大きく分けると次のようになります。

 1. クラブ活動 2. 担任としてのホームルーム活動 3.担当教科 4.不登校の生徒や悩んでいる卒業生との関わり 5. 情報科目 これらの番号は経験した時間的順番でもありますから、この順で話します。

 1. コンピュータはハンディを持った生徒にとって良い表現手段になります。十年前に、鉄道研究部の顧問をしていた私は、クラブに筋ジストロフィーの生徒を受け入れることになりました。どんな活動が可能かと考えて、グラフィクスに優れているパソコンを購入し、彼と共にポスターや絵を描き始めました。その後美術の先生の指導もあって、自分を語ることの少なかった彼は絵によって気持や夢を表現し始めました。ここでは彼の絵を二枚見てもらいます。一つは幻想的な花の絵で、静かな彼の心を表しているようです。もう一つは、天の川の絵で、一つ一つの星の色を決めながら丹念に描いたものです。一心に絵を描いていた様子は今でも目に浮かびます。彼は大学では宇宙物理を専攻しました。この絵は彼の将来の夢でもあったのです。

 当時の鉄道研究部には学校不適応生徒が多くいました。彼らもコンピュータによって自己表現の手段を得ました。人前にでるのが苦手でも、映像や音声で皆をあっと言わせることは出来ます。その時の喜びによって彼らは能力を伸ばしていきました。彼らの多くは社会人ですが、後輩に不登校等で悩んでいる生徒がいると相談に乗ってくれる頼りになる卒業生です。

 2. コンピュータを使うと映画は楽しいホームルーム活動になります。四年前に関西学院中学部に交換教員として派遣されました。担任として文化祭を迎えた時に、どうやってクラスを盛り上げたらいいのか悩みました。中学生の指導に自信がなかったのです。考えた末に生徒と共に映画を作りました。鉄道研究部OBの協力もあり、文化祭で熱狂的な人気を得ました。それ以後何度も生徒と共に映画を作り、毎年の文化祭は充実した時期になりました。実際に作った映画の一シーンを見てもらいます。骸骨が動き回るこのシーンだけで一ヶ月くらいの製作時間がかかっています。しかし凝ったものを作らないのなら映画製作はそれほど大変ではありませんから、クラスで取り組むには良い課題だと思います。コンピュータを使いながら、チームプレーの難しさや楽しさも学びます。やってみようという人がいたら電子メールを送ってください。いろいろなトラブルを回避するためのアドバイスをしたいと思います。

 3.コンピュータを使った高校生による数学研究。私はMathematicaというソフトを使って、高校生と共に数学の研究をしています。コンピュータで数学実験をすることによって、新しい事実を見つけることができるのです。昨年は新しい定理を発見することができ、国際学会で高校生と一緒に研究発表しました。生徒が見つけた面白い現象を画面上で一つ紹介します。

 4.不登校の生徒と付き合う時や卒業生の相談を受ける時、電子メールは有効です。もちろん実際に会うことが大切なのですが、会えない時期に疎遠にならずに済みます。ここ数年は彼らと数え切れないくらいのメールのやり取りをしました。ただし、メールでは肯定的な言葉、暖かい言葉だけを使う方が良いです。何故なら相手の反応を見て修正することができないからです。踏み込んだ話をするには直接会うしかないと思います。手紙よりも簡単だけど、その分危険の大きさもだんだんと判ってきました。

 5.情報の科目におけるプレゼンテーションの授業について
私達の学校では情報の選択科目の中で、プレゼンテーションのソフトを使って自己紹介をさせています。その中でいろいろな面白い才能を持った生徒が見つかっています。本とか文章は苦手でも、映像になると豊かな表現をする生徒がいるのです。ここでは人生と宗教をテーマにした一つの作品を見ていただきます。私自身も、これを見て感銘を受け、以後彼とは人生や宗教について話すようになりました。

 最後に、生徒と共にコンピュータを使う上で大切なことを話します。コンピュータのように日進月歩の分野では生徒が教員より優れていることがよくあります。生徒に教えてもらうことが沢山あっても良いのです。いろんな知識がコンピュータには必要なので、教員がどこかの分野(数学とか国語とか)において実力を持っておくことは大切ですが、常に生徒の上にいなくてはいけないと考えると、教師はしんどいし、生徒も伸びません。教師と生徒が良い意味で仲間として活動するのが生徒を伸ばすには必要だと思います。

〈関西学院高等部教諭〉

キリスト教学校教育 2003年1月号4面