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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 一般社団法人キリスト教学校教育同盟

新たな時代におけるキリスト教学校の使命と連帯-いのちの輝きと平和を求めて-

一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

Assocition of Christian School in Japna Since 1910

キリスト教学校教育バックナンバー

夏期行事各地で開催
関西地区
キリスト教教育とは何か ―現場の声を聞きながら
第45回夏期研修会

原 真和

 第45回目となる今年度の関西地区夏期研修会は、「キリスト教教育とは何かー現場の声を聞きながらー」を主題に、8月7日(木)から二泊三日の日程で、京都ガーデンパレスにて行われた。地区の加盟校、小中高大のそれぞれより38名が参加し(含部分参加)、よい研修と交流の時となった。

 初日に井上勝也氏(同志社大学教授)の講演、2日目に山本秀樹氏(金城学院中学校教諭)と小見のぞみ氏(聖和大学助教授)の発題を聴いた。

井上勝也氏の講演
 1936年生まれの井上勝也氏は、敗戦後の教師たちの豹変に衝撃を受け、嘘をつかない教師を志して、1954年、同志社大学文学部に入学した。それ以来、半世紀に及ぶ同志社での学生・教師・研究者(教育哲学)としての経験に基づいて、キリスト教主義教育とは、を熱く語った。とくに、教師と生徒の関係を対等な真理の求道者であるとした新島襄の教育観や、イエスの生き方、イエスの譬え話を取り上げながら、イエスをモデルとして生きる人間を育てること、そしてそのことを教師がみずからの生きざまを通して生徒・学生に教えることが、キリスト教主義教育の要であることを強調した。

山本秀樹氏の発題
 時代の急激な変化の中で、生徒たちだけでなく、教師たちも、迷い、傷ついている。ところが、生徒たちは互いに連帯するが、教師たちは個人の力量の問題だと考えがちである。しかし、それでは生徒たちに負けてしまう。そういう危機意識のもとに、教師たちがお互いの苦悩を理解しあいながら、ティームとして、助けあって働けるようになるための土壌づくりの工夫として、山本氏は、金城学院中学校における「ワークショップ」という、体験学習型の教師たちの相互研修の実践例を紹介した。その成果は生徒たちにもフィードバックされる。「ワークショップ」の試みは、建学の精神の具現化でもある。その結果、教師たちは、さまざまな積極的提案をするようになった。困難こそチャンスであることを強調した。

小見のぞみ氏の発題
 私たちは誰を相手にしているのか。彼らはキリスト教のこと、聖書や礼拝のことを、そもそもどう思っているのか。そして、彼らは、授業や礼拝をとおして聖書やイエスと出会っていく過程で、どのように変わっていくのか。小見氏は、短期大学部保育科の必修授業の学生たちがノートに記したコメントを、具体例として詳細に紹介した。学生たちの大半は、最初、キリスト教に対して否定的な気持ちをもっている。同時に、彼らは敏感な霊的感性をあわせもっている。そして、反発を覚えながらも、彼らは聖書やイエスに出会い、変わっていく。学ぶ者、教える者に変化が起こってこそ、そこに教育が起こったと言える。そして、聖書の物語は、今もなお、信頼するに足る、人を変える力をもっていることを強調した。

 京都ガーデンパレスから徒歩数分のところに同志社と平安女学院がある。京都御所を横に見ながら、両校の歴史的建造物である礼拝堂に足を運んで、二度の朝の礼拝を守ることができた。得難い、豊かな時であった。同志社の礼拝堂の前で記念撮影をしたが、その間、ある参加者がマンドリンを奏でてくれた。

 また、今回初めて、2日目の夕食は、それぞれで、という形になった。街に繰り出す者、ホテルに留まる者、それぞれ、よい交流の時、あるいは休息の時をもった。
今回の主題は、とくに目を引くものではなかったかもしれない。しかし、それは、困難な時期であるからこそ、あえて基本的なことを確認しようという意図であった。
関西地区の「夏期研」は、小学校から大学までの教員と職員とが、ともに研修と交流の時をもつという趣旨であるが、参加者のほとんどが教員であった。この点は、今後の課題ではないだろうか。

 ただ、数名のチャプレン職の参加者があった。成績評価をしないチャプレン職だからこそもてる学生・生徒との関係があることを、あらためて思わされた。

 分団協議、全体協議、ともに活発な議論がなされた。ある参加者は、フィンランドがグループ研究とITを組み合わせることで成功した、示唆深い例を紹介した。何かを聞くだけの研修会ではなく、それぞれの現場で労苦している者たちが集まって、いっしょに何かを作り出していくような研修会を望む、という声があった。最も小さな者にこそ、そして、キリスト教のメッセージそのものの中にこそ、希望があるはずだ。その希望に、どうしたらつながれるのか。同盟はそのためにどんな力を発揮できるのか。そういう問いかけがあった。

 関西地区の「夏期研」には、それぞれの現場や立場の違いを超えて、同労者どうしが出会い、交わる喜びがある。しかし、取り組むべき課題もある。キリスト教学校が日本社会、人類社会の希望の光であり続けるために、同盟が、同盟だからこそ可能な力を発揮することを願う。

〈聖和大学助教授〉

キリスト教学校教育 2003年10月号3面