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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 一般社団法人キリスト教学校教育同盟

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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

Assocition of Christian School in Japna Since 1910

キリスト教学校教育バックナンバー

夏期行事各地で開催
西南地区
厳しい時代に生きる同盟の決意と連帯の大切さ
第53回夏期学校・第43回新任教師オリエンテーション

齊藤 皓彦

 表記の集会が、8月4日と5日の2日間にわたって福岡市で開催された。主題は「共に重荷を負うキリスト教学校」で副題が「その固有の使命を果たすために」である。これは昨年と同一のテーマであり、厳しい時代を生きる同盟の決意と連帯の大切さを現わしている。

 従来、新任教師オリエンテーションは、独立したプログラムを持たない場合もあったが、今年度は夏期学校に先立って1時間のプログラムが持たれた。講師は福岡女学院大学の齊藤皓彦学長である。内容は、「建学の精神の大切さ」「キリスト教教育とは何か」「聖書との出会い」であった。これからのキリスト教学院の教育のなかで建学の精神の強調が重要であることが指摘された。さらに、講師の聖書との出会いと聖書の面白さを中心に講演がなされた。新任教師オリエンテーションの参加者は10学院(園)から36名であった。

 夏期学校の校長は西南学院院長のL・K・シィート先生、牧師は福岡女学院大学人文学部長の斎藤剛毅先生である。講師は菅原伸郎氏で、かつて朝日新聞社学芸部「こころ」編集長を務められた方である。夏期学校全体の参加者は、講師、新任教師を含めて85名であった。この他に、担当校の福岡女学院から4名の事務職員の方々に多くのご協力を頂いた。

 夏期学校の開校礼拝は、西南地区代表理事のL・K.シィート先生によって、「来るべき未来」と題して奨励が行われた。また、八月五日の朝の礼拝は夏期学校牧師の斎藤剛毅先生によって、「傷ついた葦を折ることなく」と題して奨励が行われた。さらに、閉校礼拝は同じく斎藤剛毅先生によって「神の共に在す魂」と題して奨励が行われた。いずれも具体例に支えられた迫力のある奨励で魂を揺さぶるものであった。
主題講演Ⅰは「宗教教育の現状と課題」と題した90分の講演であった。5項目にわたって菅原伸郎先生ご自身の考えと、幅広い取材によって得られた宗教教育に関する現状と課題が語られた。(1)「原理主義の泉」と(2)「排除と受容」では、聖書記事が包含する原理主義的発想への危惧を語られた。排除ではなく、受容の精神を聖書の中にも他宗教の中にも読み取り、聴き取らねばならないとの指摘をされた。(3)「宗教教育の展望」では、様々な人によって違った意味に語られる宗教教育を、類型的に5つに整理された。その上で、宗派教育で行われる狭いものではなく、カルトや迷信への批判力を養い、自らの負の歴史をも含みつつ他宗教も教えるべきではないかと語られ、根源的情操教育の大切さを提言された。(4)「畏敬の念」では、福音書には少ないが、旧約に多く記される畏れという概念が東洋人とって違和感を伴うことを指摘された。(5)「方便と非神話化」では、迷信的な神話物語を早くから子供に教える必要はない。逆説的に、信じるなという教えや現状への批判的な取り組みの大切さと、学校の構成員全員が宗教教育に取り組むというクロスカリキュラムを考えてはどうかとの指摘をされた。

 講演2は「孤独のレッスン―根源的教育の四段階」と題して90分の講演が行われた。講演1の内容を深める形でお話であった。(1)「信じるな―迷いと疑い」では、菅原先生自身の受けた教育を振り返り、疑うことが大切な新聞記者としての目を通して、真の教育への在りかたが語られた。(2)「気付く―覚の宗教」では、久松真一氏の言葉を引きながら、信じるではなく気付くこと、了解することの大切さが語られた。聖なるものについては教えるものではなく揺り動かし目覚めさせる以外に方法がないとの指摘をされた。(3)「建てる―方便と神話」では、自ら建てることの意味について語られ、(4)「還る―ふたたび現世へ」では一度突き落とされなければ、あるいはそれを前提としなければ真の教育は困難との考えを纏められた。

 講演を受けた2回のグループ討議では、2つの新任教員グループと2つのその他のグループの4グループに分かれて討議が行われた。新任教員のグループでは、新任オリエンテーションでの講演も含めて意見交換、協議が行われた。いずれのグループに於いても、活発な討議が行われ、時間が不足するほどであった。

 菅原先生の深く広い知識と、幅広い現場での取材体験に基づいた大きなチャレンジを受け、キリスト教学校が真に深く広がりをもつ宗教教育をなすには何を考え何を大切にすべきかが語られた。しかし、菅原先生の大きな挑戦を受けて、これを受け止め深めるためになされるべきであった全体討議の場に、世話人の手違いから、先生が帰られ不在となったのは誠に残念であった。今後は、講師との質疑応答の時間をしっかり確保すべきである。

 1日目の夕食時にもたれた懇親会は、昨年と同様に予定時間を大幅に越えた学校紹介・自己紹介の場となったが、とても楽しい交わりの場となった。

〈福岡女学院大学学長〉

キリスト教学校教育 2003年10月号3面