loading

一般社団法人キリスト教学校教育同盟 一般社団法人キリスト教学校教育同盟

希望と喜びに生きる-新たな転換期に立つキリスト教学校-

一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

Assocition of Christian School in Japna Since 1910

キリスト教学校教育バックナンバー

第48回事務職員夏期学校
全体会のまとめ・共に働く者同士のつながり

田中 立子

 今年度の事務職員夏期学校は「キリスト教学校で共に働く」をテーマとし、速水優氏の講演、川端純四郎氏の「キリスト教入門」講演を元にグループ討議を行った。研修最終日にはグループで話し合われたことを全体会の場で発表することにより、さまざまな問題や考え方を共有した。グループ討議はⅠ、Ⅱ、Ⅲと3回に分けて行われた。Ⅰでは速水講演をテーマに、Ⅱでは川端講演をテーマに、Ⅲでは総括と自由な意見交換というように、各々テーマを絞ってのグループ討議であった。各グループの報告を通して、いくつかのキーワードが表出してきた。このキーワードに沿って、全体会の模様を簡単に報告してゆきたい。

「キリスト教の香り」
 各グループの発表の中から、キーワードとして繰り返されたのが「キリスト教の香り」という言葉であった。キーワード「キリスト教の香り」について、グループ各々の発表の後、夏期学校校長の船本弘毅師より聖書ではどのように語られているかについて説明された。聖書には八十回以上も「香り」と言う言葉が出てくること、キリストは十字架につけられる前にマリアにナルドの香油を注がれたことなどを通し、キリストによる香りは自然に放たれるものであることが教えられた。

 ここで、「キリストの香り」と「キリスト教の香り」とはどのように違うのかという疑問が示され、「キリストの香り」=キリスト者のかもす雰囲気、「キリスト教の香り」=学校全体の特色と、大別できるのではないかと船本師により応答があった。

 日常、キリスト教学校で働く者として「キリスト教の香り」をどのように放っていくのかという疑問も示された。これに対し、参加者からグループ討議を巡回された川端氏とのやりとりが紹介された。以下に引用する。

 『川端先生は〝こころを込めて学生に接することが「キリスト教の香り」である〟と答えられた。キリスト教を標榜しない一般的な企業ですら、心をこめて対応していると思われるが、何がキリスト教学校における〝心のこもった対応〟と違うのか。川端師は、〝キリストを見る時にキリストがどのような愛を示されたのかを考えてみよう。命を捨てるほどに愛する、この姿勢を実践することが肝要である〟と応答された。このような思いをもって対応するのと、モラル、道徳をもって対応するのとは違う。見た目は同じでも、本質が違うことがわかった。』

「自由と個性」=「共同性」「共生」
 賛美歌の意味をバッハの例を引いて語られた川端講演は、キリスト教に深く親しんでいる者にも全く普段は意識しない者にも、共に礼拝や賛美の意味について理解を助けるものであった。キーワードとして「共同性」「自由と個性」があげられる。「共に生きる」ことの意味について、深く考える機会となった。

 速水講演の中でも速水家の子供たちが受けたイギリスでの教育を通して、「個性を伸ばす教育」がキリスト教学校の果たす役割の一つであると述べられた。川端講演においては新しい共同体への変革においてキリスト教の果たす役割が大きいのではないかと問題提起された。このような流れの中から、参加者から特に「自由と個性」について意見が発表された。以下に引用する。

 『最近は自分の意見をきちんと発表することができない学生が増えて来ている。このような自己主張をしない学生は、共生は得意であろうか。必ずしもそうではない。個性を伸ばす教育を受けているはずであるが、不思議なことである。』

 『反対に自己主張ばかりする学生が多い現状をかかえている場合もある。しかしだからこそ、キリスト教学校に勤める教職員が教えて行くことが大事になるのではないか。』

 これらの意見に対し、小﨑師より次のようなコメントがあった。
『多くの実態があり、一概にこうである、とは言いがたいことである。自由な個性はばらばらな孤独に収斂している。どのようにして、いろいろな個性と一緒に歩んで行ったらいいのか、という経験を日本の社会はしてきていないのではないか。ばらばらな状態をうめく段階を経ることで、ばらばらな個性を共に生きる豊かさへと至るのではないかと考える。』

「賛美、音楽」
 事務職員夏期学校において有志の聖歌隊が編成された。川端講演によって音楽に対する理解が助けられたことから、音楽について交わされた意見を中心に報告したい。

 音楽の奉仕を担った参加者からは、以下のように語られた。
『ルターが神にたいする信頼として賛美を捧げたことを学び、大変に納得した。神を見なければ、賛美できない。誰でも神を賛美することがイエスにつながることであると実感することができた。信仰生活30年であるが、信仰をしっかりともって、学校での業務にもいそしんでゆきたい。』

 『歌いやすい、親しみやすい、美しいという三点が賛美歌の特徴である。学生時代聖歌隊だったが、ノンクリスチャンのメンバーもおり、よく議論を戦わせた。現在、自分は賛美というものはクリスチャンだけのものではないと考えるようになった。』

 以上、キーワードを中心に夏期学校全体会で交わされた意見の一部を紹介した。キリスト教の学校がどのように社会に貢献できるのか、また、これからどのようにして存続していくのかについても、講演を通して多くの示唆を得ることができた。キリスト教学校に働く者同士のつながりを大事にしていく為に、キリスト教学校の教員との交流を深める研修の必要性や業務別、年代別の研修の必要性なども示され、今後の研修のあり方を考える機会ともなった。

 最後であるが、このような研修を準備し支えて下さった事務局の方々、ご奉仕下さった講師、牧師の先生方に感謝申し上げたい。栄光在主。

〈青山学院大学庶務部経理課〉

キリスト教学校教育 2004年9月号7面