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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

Assocition of Christian School in Japna Since 1910

キリスト教学校教育バックナンバー

各地区の夏期行事
東北・北海道地区
キリスト教学校の祝福と課題
教育研究集会大学部会

山口 博

 今年度の研究集会は『人をはぐくむキリスト教学校―建学の精神を共に担う―』と題し、八月三十・三十一日にかけて当番校の北星学園によるお世話を頂き、札幌グランドホテルを会場として行われた。六法人四十二名(事務局を含む)の出席であった。

 はじめに三上章氏による開会礼拝「パウロの説教は失敗か?」との奨励を頂き、使徒言行録第七章をテキストにギリシャ哲学を専門とされる三上氏の視点から語られた。

 地区代表理事倉松功氏ならびに当番校を代表し大友浩氏の挨拶に続き、教研中央委員の佐々木哲夫氏より主題の解題がなされた。教研中央委員会で決定、総会で承認されたことを受けて今回のテーマが設定された旨が語られ、昨年の主題である「共に重荷を担うキリスト教学校」の「共に」という語句が継承され、われわれは孤立した学校ではない。そして、価値多元の時代の中にあって、人をはぐくむ学校であることを前面に出すことの必要が語られた。

 その解題を基に具体的に発題して下さったのは、倉松功氏と大友浩氏であった。山我哲夫氏の司会により倉松氏は「キリスト教大学の形成―その祝福・課題と問題―」と題し、「祝福」をキーワードに講演がなされた。キリスト教大学の教育目的、学則第一条ないし寄付行為第三条の意味するところについて、その源として、神が人間(キリスト者もそうでない者も)を創造されたことに祝福があり、それゆえに学ばなければならない。次に、人間の形成とその教育的根拠について、創世記と十戒そして福音のコンテキストから神に似せて創られた人間の尊厳と基本的人権そして、キリスト教学校の祝福と課題について語り、日本における仁・義・礼、アニミズム的世界にあって人間を特別に祝福された聖書の人間観をもとにした人間形成が語られた。そして現代における人権の問題について、ドイツ共和国憲法基本法の構造と国連の世界人権宣言について解き明かされ、日本の憲法と比較がなされた。次に、東北学院のキャンパスミニストリーについて触れ、福音を語ることは美しいことであり、礼拝を中心にしなければならない。それはクリスチャン・ノンクリスチャンにかかわらず、共通に神から祝福を受けているのだから、そのGabeがAufgabeとなる。したがって、教会が改革され続けているごとく大学も改革されねばならない。そして何よりも個々の人間が改革されねばならないと締め括られた。

 次の講演者、大友浩氏は「キリスト教教育の新体制について―北星学園大学の場合―」と題し、初めに倉松氏の演題を巡って、「祝福」は国立大学では言えないことであり、大事にしなければならない。「キリストから」くる祝福は全ての教職員学生に与えられるものであり、ゆえに「キリストへ」伝道すること、つまりチャペル活動は教職員の果たすべき事であると述べられた。そして、学園創立者サラ・クララ・スミスの建学の精神について触れ、高等教育部門の基本理念の必要性が語られた。実際に北星学園大学の基本理念とミッション・ステートメントの紹介がなされた。その具体例として学園の宗教部・宗教部長・チャプレンの役割・位置付け等の再検討の経緯と結果が述べられ、二〇〇三年に「キリスト教教育あり方委員会」を設け、チャプレンは講義を持たず、宗務職から教育職となり、宗教部はスミス・ミッションセンターへと改組された。終わりに教育と伝道について、区別はできるが分離はできない。分離はできないが区別すべきであると締め括られた。質疑応答の後、懇親会において各大学のおかれている現況が披露され一日目のプログラムが終了した。

 二日目はジェイムズ・E・アリソン氏によって朝の礼拝がもたれ、ルカによる福音書2章41~52節のみ言葉により「前進のための後戻り」と題し、失われた価値観を求めるべくイエス・キリストを今一度思い起こし、前進しなければならないと語られ、その後研究会が始まった。分団討議は中澤實郎氏、伊澤佑子氏、梅津義宣氏の司会によって行われ、それぞれの討議内容を全体討議の中で発表しそれぞれの意見を開陳させた。

 全体討議は教研委員の山口の司会により各分団討議の内容を深めていく形になった。

 討議の内容を列挙すると、礼拝のあり方、日曜日のキャンパス利用の問題、FD、クリスチャン条項、ボランティア、大学と教会との関係、等につて話し合われた。いずれも重要な問題であるが、神の「祝福」を感謝しながら一歩でも二歩でも進んでいくことが望まれるであろう。今年度の主題「人をはぐくむキリスト教学校―建学の精神を共に担う―」の「共に担う」ために建学の精神の重要性を確認し、次年度は、開催県を宮城県に移し、当番校を東北学院にご依頼する案が出され、今年度の内容を深めることとし、全体討議が終了した。

 閉会礼拝は台風の影響で担当者が不在になり、教研委員の山口が担当し士師記8章23節のみ言葉「主が治められる」をテキストに奨励がなされた。最後に地区理事の杉本拓氏によってねぎらいと感謝に満ちた挨拶がなされ今年度の研究集会の幕が閉じられた。

〈酪農学園大学教授〉

キリスト教学校教育 2004年10月号3面