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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

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キリスト教学校教育バックナンバー

東北・北海道地区 教育研究集会中高部会
小樽・余市 学びと交わりに満たされて

浅野 純

 二〇〇四年度の地区教育研究集会中高部会は、小樽市を会場に十月二十一日から二十三日にかけて開催された。

 開会礼拝は北星学園余市高校宗教主任の塩見耕一先生から「見失った羊」の譬えをテキストに、「なぜ一匹の羊は群れを離れたのか」を問いつつ、愛されていることを身をもって体験する場がキリスト教主義学校であるとのメッセージが伝えられ、説教題の通り参加者が「共同体」であることを感じつつプログラムが始まった。

 地区代表理事の東北学院学院長倉松功先生から「わたしたちは神によって定められ、命じられて教育に携わっている」との力強い励ましの開会挨拶を受けた後、講師として迎えた近藤恵子氏による講演が行われた。

 全国女性シェルター共同代表・札幌市男女共同参画審議委員などを務める近藤先生の「ドメスティックバイオレンスと子どもへの影響」と題された講演は、まず現代の子どもを取り巻く状況の深刻さと切迫した状況を訴えかける。学校教育の現場に携わる者にとっての課題のひとつは平和を追求し、あらゆる暴力を根絶していくことであるが、その求めにもかかわらず実際には極めて身近なところで、しかも頻繁に暴力が行われているという現実を突きつけられた。「社会全体が急激に暴力的に変化している」という近藤氏の言葉は重い。被害者の多くが子どもたちであることからも、教師として看過できない問題であると受けとめ、絶えず社会の問題、人権の問題に取り組んでいるわたしたちの大きな課題であることを確認し合った。近藤氏は「困難を抱えた子どもを発見し、共感する目を持ってほしい」と講演を結んだ。被害者の救援・支援と加害者の責任・原因追求に携わっている近藤氏の働きに、学校も連携する必要性、可能性を感じる。

 夕食後の聖書科部会では「今、聖書の授業」という継続テーマに則し、北星学園女子中高の実践報告があった。それを受け、授業のみならず宗教教育や宗教行事に関わる情報交換や意見交換も行いつつ、各教師が担っている聖書科教育の在り方、目指す事柄についての認識を深め合った。

 二日目の朝、今回の当番校である北星学園余市高校に向かって小樽を出発。学校礼拝に合流し、ぶどうの木のたとえから「四十年間実を実らせ続けるぶどうの木は一本の幹から枝を伸ばし、その長さは数十メートルにも及ぶという。わたしたちもそのように豊かに成長したい」との塩見宗教主任の奨励を生徒と共に受ける。

 学校報告は互いの理解を深め、課題を共有し合う大切な機会である。今回は北星学園大学付属高校・東北学院高校の二校。北星学園大学付属高校はクリスマス行事を通しての平和への取り組みを中心とした学校紹介。東北学院高校は新校舎計画を披露。完成を直前にしてのカリキュラムの改編や行事などについて報告。また情報交換として各校の「新カリ」実施についての現状報告が行われた。

 午後は北星学園余市高を校内見学しつつ、余市高の歩みに心を寄せるひとときを過ごした。メディアによって余市高の特色ある教育が広く知られているが、実際に生徒の学校生活の様子を見る貴重な機会であった。中途退学者支援という発想がまだない当時に時代を達観し、全国十二万人にも及んでいた高校中途退学者を受入生徒の対象にするという決断をした余市高。多くの困難、試練を乗り越えてなお課題を負いつつ、地域の協力、信頼を得て地域と共に歩むキリスト教主義教育のあるべき姿の一つを提示された。

 しばしの小樽でのフリータイム後行われた教育研究委員会では次年度のテーマ、日程、当番校などを決定し、教研中央委員会や中高全国部会の報告を行い、また時期委員候補者を選出した。

 最終日は弘前学院聖愛高校の石垣雅子先生の礼拝で朝を迎えた。「実のならないいちじくの木」のたとえを通して、「できないことを少なくする」ことで人を育てようとするのではなく、未来の実りに期待して待つ教育が求められているとの示唆を受ける。

 全体会は前日の教育研究委員会、聖書科部会などの報告に続いて参加者の意見交換を行った。「私学」であることの意義、国公立大学への進学を第一目標として教育することへの問いかけや、時にかなった平和教育の重要性の再確認など、積極的な発言が交わされた。参加者一人ひとりが今の時代におけるキリスト教主義教育の課題を、歴史の担い手として真摯に担っていることを強く感じる会議となった。次年度の開催日程と当番校を決定し、全日程の締め括りとして、とわの森三愛高校の榮忍先生が「ペトロのメシア告白」の箇所を用いて、わたしたちの期待していることが本当に正しいことかどうかの問い直しの必要性を訴えかけた。ともすればこの世的な期待に迎合し、この世の富を追求しがちであるが、何よりも神からの期待に応えるわたしたちであるために真にあるべき歩みを進めていかなければならない思いを強くして全日程を終了した。

 全校礼拝に共に参加できるようにと平常の時間割を変更し、ありのままを披露するために授業中にもかかわらず校内を自由に見学させてくださるなど、多大なご尽力を頂いた当番校の北星学園余市高校に感謝しつつ。

〈北星学園女子中高校宗教主任〉

キリスト教学校教育 2005年1月号4面