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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

Assocition of Christian School in Japna Since 1910

キリスト教学校教育バックナンバー

各地区の行事

関西地区
キリスト教学校のミッションマネジメント

第47回夏期研修会

原 真和

 第四十七回となる二〇〇五年度関西地区夏期研修会は、「キリスト教学校のミッションとマネジメント」をテーマに、八月三日(水)から四日(木)の日程で、京都ガーデンパレスにおいて行われました。

 建学の精神を学校の内外に周知させ、教育や運営の根幹とすることは、加盟各校の基本的な課題ですが、昨今は、そのことが、第三者評価機関が挙げる最重要の評価項目になるなど、社会的な要請にもなっています。今回は、ミッションを明確にすることの重要性を、神学的な観点よりも、キリスト教学校のマネジメントという視点から学びたいと考えました。この趣旨において、最も適切な講師と発題者を迎えることができたと考えております。講師の島田恒氏は、京都文教大学教授で、キリスト者として非営利組織の経営論を専門としておられる方です。発題者の岩坂正雄氏は、プール学院の理事長であられます。

ミッションに基づいたマネジメント

― 島田恒氏 講演

 敗戦後、日本は、驚異的な経済発展を遂げましたが、過度の経済主義が、社会を歪め、個人の生を歪めてきたことも事実です。人間の生にとって経済は重要ですが、経済だけが、政治や文化、共同(共生の原則)を凌駕するまでに肥大化している現状は是正する必要があります。学校を含む非営利組織は、文化と共同の部分を担っていると言えます。その意味で、キリスト教学校に期待されるものは大きいのです。

 ミッションの表明は、価値観の表明であり、社会を変革し、人間のあり方を変革する信念の表明です。学校を含む非営利組織にとって、ミッションは命です。使命とは、文字通り、命を使うということなのです。

 ミッションは、社会に評価される成果を上げるものでなければなりません。ミッションが成果を上げるためには、マネジメントが必要なのです。成果を上げるためには、第一に、そのミッションが社会の必要に応えるものでなければなりません。第二に、そのミッションを達成する能力がその組織に具わっていなければなりません。

 他所にない、自分たちにしかない特徴の源泉は、自分たちの価値観、信念、ミッションにこそあるはずです。そして、そのミッションは、「わが校」を維持・発展させるということにとどまらず、社会や人間のあり方を変えていくというものでなければならない。しかも、そのミッションの価値を社会に受け入れられるように届けなければなりません。ミッションを強烈に打ち出す、しかも、社会や市民に喜ばれるように打ち出す必要があるのです。

 人材の活性化はマネジメントの課題の一つですが、そのためにもミッションは重要です。共通のミッションへの共感に基づいた協働が、職員と教員の間に、そして、キリスト教学校の間に、ますます必要になっています。

ミッションを支えるマネジメント

― 岩坂正雄氏 発題

 キリスト教学校も市場原理にさらされています。そのこと自体は避けて通れないことですし、そのことのゆえに私たちはより生徒・学生の視点から考えるようになりましたし、よい面もあると言えます。しかし、キリスト教学校のマネジメントは、ミッションに基づいた、ミッションを実現するための、ミッションを支えるマネジメントであることを忘れてはなりません。

 営利組織のマネジメントのモデルをそのまま持ち込むことはできません。企業の場合、利益は出資者である株主に配当されます。私立学校の場合、出資者とは寄付行為を起こした者、すなわち創立者であり、創立者の願いである建学の精神なのです。学校の収入はそのために用いられます。

 学校を含む非営利組織の職員は、ミッションに賛同する人々であり、そのために働く喜びが第一の報酬であり、生活の保障は第二の報酬です。労働搾取を避けるという課題をもつ企業における労使関係とは基本的に異なった構造をもっています。

 生徒・学生は顧客でしょうか。彼らの本当の必要には応えなければなりません。しかし、彼らの表面的な欲求には応えるべきものではありません。

 青少年の人口が減少する中で、キリスト教学校の運営には、信仰に基づいた英知とノウハウがますます必要になっています。仕えるためには、思いだけでなく、技量も必要です。「善いサマリア人」は手当のノウハウもロバもお金ももっていました。

 同盟としては、何ができるでしょうか。私たちは同じ志をもつ盟友なのです。YMCAには学生YMCAの担当者がいたものです。そのように加盟各校と密接に関わるプログラム開発の専任スタッフを同盟に置くことを検討してはどうでしょうか。また、出向などの形で、期間を限定した人事の交流を検討してはどうでしょうか。

 分団協議、全体協議でも、活発な意見交換がなされました。ミッションは共有されなければなりません。それには、努力や工夫、忍耐や時間が必要でしょう。教職員が共有できないミッションをどうして生徒・学生に伝えることができるでしょうか。どうして社会の隣人たちに伝えることができるでしょうか。

http://homepage2.nifty.com/markhara/

〈聖和大学教授、関西地区夏期研修会実行委員長〉

キリスト教学校教育 2005年10月号7面