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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

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キリスト教学校教育バックナンバー

関西地区

新人教師研修会に参加して

藤浪 侑子(桃山学院高等学校教諭)

 去る十月十五日(土)と十六日(日)の二日間、関西学院千刈セミナーハウスにて二〇〇五年度新人教師研修会が催された。当日セミナーハウスに到着すると少し肌寒く、いよいよ研修会が始まるのだと身も心も引き締まる思いがした。
 開会礼拝後すぐに第一セッションが始まった。A~Hの班を作り,何をするのだろうと不安に思っていたが、渡されたのは画用紙と筆記具で「私の宝物」を描いて自己紹介をするとのことだった。私は三番目の発表で何を話すのかまとまらない内に自己紹介をしたが,約六十名の先生方は一人一人個性的な自己紹介をされ,非常に打ち解けた雰囲気の中楽しい気分で時間は過ぎていった。あまりにも盛り上がり過ぎたためこの自己紹介は予定変更され夕食後まで続いた。

 自己紹介が終わりすぐ第二セッションが始まった。自分の学校における問題点や悩みを十個挙げてポストイットに書き、それぞれ学校の問題点を大きな模造紙を使って分類していくというものであった。皆黙々と問題点を書き十個では足りないという様子であった。グループ分けすると生活指導や科目・学級指導の問題点、家庭環境等の問題点、学校の方向性や仕事の割り振り等に対する問題点に分かれた。その問題点を挙げていく中で自分だけでなく皆が同じようなことを考え悩んでいるのだと少し安心した。皆の意見をまとめていく過程で「学校を一本の木だと見立てよう」という意見が上がり、枝葉には対生徒の、根には対経営陣の、そして木の下の家の中には対保護者の問題点をまとめた。そして木を照らす陽には自身の教員としての資質に対する疑問や不安を、木の幹にはキリスト教主義学校のあり方についての疑問点をまとめた。自分の班ではよく意見がまとまったと感じていたが、貼り出された模造紙を見るとどの班もわかりやすく意見がまとめられており、いずれも興味深かった。第二セッションの最後には関西学院高等部の八尋孝一先生による発題が行われご自身の経験談等を非常に面白く話してくださった。その中で「授業をしてこそ教師」という言葉が印象深く残っている。生徒にとっては同じ「先生」だがやはりベテランの先生のされる授業は違う。それを研究しうまく模倣していくことは決して恥ずかしいことではなく自身の授業向上の近道であるのだと感じた。

 一日目セッション終了後に交流会が催され、他校の先生方との話に花が咲き就寝時間が迫るまで交流会は続けられた。

 二日目は主日礼拝に始まり各班に分れての話し合いとその発表、清和学園の横山義郎先生の助言による総括が行われ、閉会礼拝で今回の研修は幕を閉じた。

 今回の研修では特に同年代の新任の先生方からたくさんの刺激を受けた。同じ悩みを持つものとしての共感、また同じスタートラインに並ぶライバルとして自分も負けてはいられないという思いもあった。そして何よりもまた明日から頑張ろうという前向きな気持ちになれた。この研修会を支えてくださった全ての人に感謝したい。

西内章二(桃山学院高等学校教諭)

 今年度の新人教師研修会が、去る十月十五日(土)から十六日(日)まで、関西学院千刈セミナーハウスで、スタッフ・受講者あわせて六十名弱の参加者により開催された。セミナーハウスは山深い大自然に囲まれた地に静かに佇んでおり、普段の慌ただしい日常とはかけはなれた空間で、緊張しながらも新鮮な気持ちで研修会に臨むことができた。

 チャペルでの礼拝を終えたあと、さっそく第一セッションが開始される。画用紙と筆記具を前にして、「私の宝物」を描いて自己紹介するという内容であった。参加者全員が紹介をするということでかなりの時間を要することとなったが、意図せずそれぞれが違うものを描き、様々なエピソードを加えての自己紹介であったため、聞いていて楽しく、また参加者同士がお互いに興味を持つことができてその後の交流に大いに役立った。

 第二セッションでは、各々が思う学校での問題点を出し合い、お互いに意見交換することで解決策を模索していこうというワークショップが行われた。問題点を一つずつ付箋に書き、模造紙の上で分類していくというKJ法を用いたものであったが、「生徒指導の難しさ」「保護者との連携がうまくいかない」「教職員のまとまりがない」「学校経営と自身の教育理念とのギャップ」など、グループ内のメンバーが皆同じような悩みを抱えている事に驚いた。「ここの学校は・・」とあたかも自分の勤めている学校にだけ起きている特別な問題である、という捉え方ではなかなか問題の本質が見えず、かえって解決の糸口を見つけることが難しくなってしまっているのではないか、そしてそれが諦めや悲観・傍観につながってしまうのではないかと考えるきっかけとなった。また、参加している他の先生方と共に抱えている問題についてぜひ話をしてみたいという気持ちが生まれ、夜の交流会ではもっと時間が欲しいと思うほど多くの話題で盛り上がった。

 関西学院高等部の八尋孝一先生による発題では、熱血指導が報われなかった話、授業の質を高めるためにいろいろと思考錯誤された話など、ご自身の体験談を赤裸々に語って下さった。先生の教育に対する熱意に共感を覚えると共に、「教師と生徒の関係は教材によって製造され得るものではなく、ただ教材によって強化され、保証されるだけなのである」というマックス・ピカートの言葉を引用された授業へのこだわりについてのお話に大変感銘を受けた。豊富な知識や優れた教材さえあれば良いという訳ではなく、どれだけ自分自身がそれらを用いる者としてのたたずまいを備えているか、という視点がなければ生徒を惹きつける授業を作り出すことはできない、ということを学べ、有意義であった。

 他にも二日間でさまざまなプログラムが実施され、また礼拝や食事の時間も含めて非常に充実した研修会となった。その大きさが実感できるほどの成長を、新しい人との出会いや発見がもたらしてくれた。この感覚を生徒達に数多く与えられる教員になりたいとあらためて思った。

 最後に、今回の会場となった千刈セミナーハウスは研修が行われた十月をもって休館となった。自分と同じ年に生まれた施設が、その役割を終えようとする間際に自身の成長を助けてくれた事に、何か目に見えない「導き」のようなものを感じる。今回の研修に参加された方々とも、二日間を通して「同じ悩みや希望を持つ者」であるというつながりを感じることができ、帰る頃にはまた明日からがんばろうという気持ちが大きく膨らんだことを今でも印象深く覚えている。このような機会を設けて下さったスタッフの方々に感謝するとともに、参加された皆様のご活躍をお祈り致します。

キリスト教学校教育 2006年1月号4面