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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

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キリスト教学校教育バックナンバー

第47回中高研究集会
発題要旨
原点(建学の精神)へ戻って前進
-継承と変革

神田 道彦

 三十六年間務めた町田市にある桜美林学園桜美林中学高等学校を辞し、長崎市にある百二十六年の歴史を刻む活水学院活水中学校高等学校の校長として着任し、二年目を迎えることになった。前任校は、今年で六十周年、中国での学園経営から数えて八十五周年、そして日本人による学園創立に対して、着任校である活水学院は今年百二十七周年を迎え、明治時代の初頭長い鎖国から解かれて開港した長崎の地へ多くの宣教師が来崎し、困難な中、伝道と学校設立という取り組みがされ、女子教育の必要性を痛感し、宣教師エリザベス・ラッセル女史により創立された歴史と伝統ある女子の学院である。大都市の郊外ではあるが、首都圏の学園から地方のしかも後背地を持たない長崎へ転じ、そのギャップの大きさを痛感すると共に、鎮西学院理事長の林田先生の言葉、「官尊民卑」の強さに驚愕、その為に公立志向が強く私学の生徒募集の困難さを実感した次第である。

 一九七九年の創立百周年の時に学院の建学の精神を再度確認し、キリスト教教育の中心は「礼拝」、「礼拝」は聖なる存在に「ひざまずくこと」、神の前に「ひざまずく」こと、他者に「仕える」こと等を再確認し、その後二十六年経てもこの建学の精神を継承して学院が運営されている。

 発題では、十年前までは中高合わせて千二百人台の在籍者を得ていたが、ここ数年減少し七百人を切る大激減、地方都市の市内では噂が駆けめぐりその対応に生徒指導部は追われる、親、塾、通りかかりの人からの苦情処理のケースを紹介し、クレーマー処理の資料を基にその対応について事例を話し、後半は、着任後いくつかの改革の取り組みについて具体的な試みを資料に基づいて話をした。また、入試改革として現在在籍している生徒達が、社会で活躍する二十一世紀中葉を見据えて、知識量をはかる入試制度から、知識の運用力をはかる適性検査導入の事例を紹介し、言語能力、数理的能力のみでなく、運動感覚、音楽リズム感覚、人間関係、自然との共生等様々な可能性を持った生徒の様々な能力をみる多重知能Multiple Intelligences Inventoryの視点で適性検査による入試を実施したこと等発題させていただいた。

 私立学校は建学の精神を持っており、それに則り教育実践をすることは、今日の時代ほど求められている時代はない。創立当初の困難な時代状況と現代の状況は異なるが、変わらざる理念を継承し、この時代に求められる人材育成を果たすために、大都市、地方都市の実情に合わせ、変革していく姿勢は管理者のみならず教職員一丸となって取り組んでいかなければならない。継承と変革の日々の取り組みが、私たちの未来に向けての歩むべき道筋を示してくれるに違いない。

〈活水中学校・高等学校校長〉

キリスト教学校教育 2006年5月号3面