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希望と喜びに生きる-新たな転換期に立つキリスト教学校-

一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

Assocition of Christian School in Japna Since 1910

キリスト教学校教育バックナンバー

聖書のことば

葛井(ふじい) 義憲

「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」(ヨハネ15・13)

 主イエスはヨハネによる福音書15章13節に綴られた言葉を人々に語り、自らも身をもってこの言葉を実行されました。ローマの支配とローマにすりよる同胞のユダヤ人エリートの態度は多くの人々に不信感と失望をつのらせていました。彼らは抑圧・支配から解放され、喜びが心に満ち、人が人を信頼し、愛し合える日の訪れを夢見ていたのです。

 こうした日々を待ち望む人々のもとで、主イエスは愛をもって働かれたのです。彼は生きることが空しいと感じる人々に、生きる意味を伝え、屈辱を日々なめなければならない人々に、神に祝された、かけがえのない存在であることを教えられたのです。また、彼をなじり、迫害しようとする人々をも愛そうとされたのです。長い間、支配され、蹂躙されつづけた人々のうちには、猜疑心やエゴイズムや孤独感などがうず高くつもっていました。これらを溶かすことは容易なことではありません。しかし、主イエスは尽きることのない愛を人々に表された。そして最後には、人々を救うために、十字架上で命までささげられた。この主イエスの愛が今日、一層求められるのです。

 私たちの社会もまた、主イエスが働かれた世界と同様、猜疑心とエゴイズムと孤独感が蔓延しています。人々は自らの生きる意味を探しあぐね、自らがかけがえのない存在であることも分かりにくくなっています。明日の希望がもてず、自らを粗末に扱い、他者をも疎んじ、無用なる存在と見なしがちです。激しい怒りと不信とすさまじい孤独感が人々を捕らえています。しかし、これはまた、温かな心の通い合いを求め、皆の中での自らの居場所を探し、他者のために役立ちたいと願い、偽りでない、確かな愛を手にしたいとの祈念の表れでもあります。それ故、私どもの教育の根幹であるキリストの愛が現代社会に必要なのです。

〈名古屋学院大学人間健康学部長・宗教部長〉

キリスト教学校教育 2006年6月号1面