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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

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キリスト教学校教育バックナンバー

各地区の夏期行事
関東地区
新任教師の体験の意味とその役割

第48回新任教師研究会

水口 洋

 関東地区第四十八回新任教師研修会は、八月七~九日の日程で、ホテル箱根アカデミー(芦ノ湖畔)で行われた。今回は四国の松山東雲学園と清和学園からの参加者を含めて、総勢七十六名(新任は二十八校・六十五名)で、主題は「新任教師の体験の意味とその役割―新任者が育つ場、新任者が育てたいもの―」であった。数多い参加者にも関わらず、適切な講師と積極的な参加者の雰囲気の中で、大変まとまりのある良い研修会となった。

 一日目は、和田道雄委員(明治学院中学校・東村山高等学校校長)の開会礼拝で始まり、今回の研修会の講師である松平信久氏(立教学院院長)による主題講演が行われた。翌日の午前と二回にわたる講演では、松平氏自身が小学校から大学まで様々な児童・生徒・学生を教えてこられた自らの体験に基づき、具体的かつ示唆に富んだ講演を伺うことが出来た。

 小川正夫委員(聖ステパノ学園小中学校長)の司会で行われた講演Ⅰで松平氏は、新任期の出会いや体験が教師としての歩みに大きな影響を与え、方向づけることを数々の事例を通して語られた。失敗やマイナスを含めたすべての経験に意味があり、教師には困難な時代ではあるが、教師としての自分を創っていってほしいと、愛情を込めて語りかけられた。

 翌日の講演Ⅱでは、松平氏自身の教育実践をもとに、教師の関わり方により児童・生徒は自らの潜在能力を開花させていくということと、それによって教師自身も育てられていくことを語られた。自らの表現力や感性、コミュニケーション能力を高める不断の努力を継続してほしいと新任の教師に勧められた。

 不安と緊張のうちに過ごした数ヶ月の生活を経て、今回この研修会に参加した教師達は、松平氏自身の人柄から醸し出される温かい空気の中で紡ぎ出される言葉を通して、安心して今自分に与えられた場所で教師として仕事を続けることに、新たな自覚と使命感を発見できた良い講演であった。

 また一日目の夜には、三人の先輩教師からの発題の時間が設けられた。いずれも現場に密着した説得力のある内容であった。はじめに岡崎一実氏(平和学園小学校校長)の発題があった。公立小学校での長い実践を踏まえて、特に若いうちに意欲的に学び続け、実践を重ねることの重要性を迫力を持って語られ、自らの実践を紹介された。私立学校にいる参加者に自らに厳しくあることを勧められたが、皆に感銘を与える内容であった。次に柳沢善敏氏(フェリス女学院中学校高等学校教諭)は、教師であると共に人間である私を確立していくことの大切さを、自らの歩みを紹介しながら語ると共に、その自分が生かされていく教師という仕事の奥行きの深さと豊かさを自らのことばで語られた。率直な語り口と誠実な人柄に納得させられた。最後に清水広幸氏(聖学院中学校高等学校教諭)は、自らが教師として育てられてきた足跡を、失敗を含めて率直にそして真実に振り返りつつ、キリスト教学校の教師として生きていく素晴らしさを証しし、これからの時代を託す新任教師に対する期待を、熱い思いを込めて語られた。

 三者に共通していたのは、自らの現場での経験を踏まえた話題を土台とする発題であったこと、タイプは異なるがいずれも教師として積極的に自分を磨いてきたキャリアを持っていたことであり、主題講演に連動する実践でもあった。参加者は、キリスト教学校に勤める者としての使命感(ミッション)を強く感ずることの出来た濃厚な時間であった。

 前半でたっぷりと刺激を与えられた参加者達は、二日目の午後から六つのグループに分かれて話し合いの時を持った。今感じていること、戸惑っていること、抱えている課題などを、率直に語り合った。学校による違いや置かれている条件、キリスト教学校に勤めるまでの経緯の違いはあったものの、講演と発題が実践的であったこともあり、有意義な話し合いの時を持つことができ、夜遅くまでの自主的なグループディスカッションも含めて、充実した時間を過ごした。又、食事の時間毎に各校の紹介の時を持ち、キリスト教学校の連帯を確認することもできた。

 三日目には、横山茂委員(捜真女学校中高部長)の司会で、分団協議の発表の時を持ち、その後、参加者全員がこの三日間の気づきを披露した。最後に高橋貞二郎委員(東洋英和女学院中学部高等部宗教主任)の閉会礼拝をもって会を終了した。

 主催者である関東地区中高部会長である平塚敬一委員長(立教女学院中学校高等学校校長)のまとめにあったように、厳しい時代の中でキリスト教学校の教師として招き導かれたこの六十五名の人たちの中から、将来のキリスト教学校を担っていく人たちが起こされていくことを期待したい。参加者は、心配した台風の直撃をうけることなく、それぞれの学校へと箱根の山を降りていった。

〈玉川聖学院中高部長〉

キリスト教学校教育 2006年10月号6面