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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

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キリスト教学校教育バックナンバー

各地区の夏期行事
関西地区
若者は何をどのように学んでいるのか

第48回夏期研修会

原  真和

 第四十八回となる二〇〇六年度関西地区夏期研修会は、「若者は何をどのように学んでいるのか」をテーマに、八月七日(月)から八日(火)の日程で、京都ガーデンパレスにおいて行われました。四十六名の教員と職員の方々が参加されました。

正課外の学生の活動を支援する

 今回は、講師・ファシリテーターとして、長尾文雄氏を迎えました。長尾氏は、関西学院の中・高・大で学ばれた後、一九六三年に関西学院大学に就職され、長い間、宗教センター職員として、学生支援の仕事に携わってこられました。一九九四年に進行性筋萎縮症が進行したために退職され、現在は聖マーガレット生涯教育研究所主任研究員として、人間関係トレーニング等をとおして、様々な対人援助専門職やボランティアの養成を行っておられます。

 長尾氏が就職された当時、これからの大学には正課外の学生の活動を支援する新しいタイプの専門職員が必要だと言われていました。学生を取り締まったり、管理したりするタイプの学生課ではなく、カウンセリングを含む、学生を援助する学生課像が提唱されていました。そのような中で、宣教師に勧められて参加された研修会で、Tグループによるラボラトリートレーニングという人間関係訓練の方法に出会われたのでした。

 一九七二年には、学生紛争が一段落し、大学が正常化し始めました。その頃、入学した自分の大学にアイデンティティーを持てないでいる学生たちが目に付くようになりました。長尾氏は、こういう学生たちに焦点を当て、上級生たちを巻き込んで、フレッシュマンキャンプを始められたのです。フレッシュマンキャンプはコミュニティーを体験する機会となります。在学生が上級生になる場にもなります。今では多くの大学でフレッシュマンキャンプが行われています。

 宗教センターの仕事も、学生や教員とともに、様々な正課外のプログラムを企画・運営することが中心となります。そのとき、長尾氏ご自身が、生徒・学生として関わってきたキャンプやボランティアの体験が大いに役に立ちました。

学生主体のNPO法人ブレーンヒューマニティー

 発題者の川中大輔氏は一九八〇年生まれ。川中氏は、関西学院高等部三年生のときから学生主体のボランティア組織であるブレーンヒューマニティーに関わるようになり、関西学院大学在学中はブレーンヒューマニティーの運営とそのNPO法人化のプロセスに携わってこられました。大学卒業後は立教大学大学院で学びながら、シチズンシップ共育企画を設立されました。現在はその代表・ファシリテーターとして、「市民力」向上支援の働きに携わっておられます。

 長尾氏は、ブレーンヒューマニティーの理事でもあられます。この組織の前身は関学学習指導会という家庭教師派遣の組織だったのですが、阪神淡路大震災のときに、被災児童を支援しようということになり、キャンプを始めました。そこから、サタデープロジェクト、不登校児童支援などへと事業を広げていき、今では五十九の事業、六千三百万円の予算規模になりました。十名の理事の内七名が学生で、学生が中心となって組織を運営しています。関西学院大学だけでなく、関西の他の大学の学生たちも多く参加しています。

 学生たちの多くは、友達や先輩に誘われて、最初は軽い気持ちでやって来ます。しかし、やがて自分を必要としてくれる子どもたちと出会い、仲間たちと出会い、責任を与えられる内に、自尊感情が芽生えてきます。そして、チームワークやリーダーとして決断することなどを体験し、やがてプロジェクトマネジメントや財務諸表などを理解するようになっていきます。さらに、市民社会の可能性に気づいていきます。

 キリスト教主義学校における正課外教育の場で職員と教員が共働しながら、学生たちを巻き込みながら、どのような「しかけ」でもって学生たちの学びを支援できるのか―お二人のお話をとおして、多くのヒントを学び取ることができました。

ポストイットを使って

 二日目のグループ討議は、長尾氏をファシリテーターとして行いました。

 参加者たちは、手をつないで輪になったり、肩をたたきあったりして、お互いの距離を縮めていき、目と目でコミュニケーションしながら六名くらいの小グループに分かれました。名前とどこから来たのか、そして今の気分やしたいことなどを語りあい、お互いの距離をさらに縮めていきました。

 そうした後、模造紙と大きめのポストイットを使い、いわゆるKJ法にヒントを得た方法で、「若者のイメージ」と「私たちが若者に対してできること」について話し合いました。参加者はそれぞれの意見をポストイットに書くので、どんな少数意見も忘れられることがなく、形として模造紙の上に残ります。また、ポストイットは何度も貼り直すことができます。短時間の内にグループの意見が形となり、誰でも簡単にプレゼンテーションができてしまうことに驚きました。

 今回も朝の礼拝を聖アグネス教会で行うことができました。聖アグネス教会と平安女学院の関係者の方々に感謝申し上げます。

〈聖和大学教授、関西地区夏期研修会実行委員長〉

キリスト教学校教育 2006年10月号7面