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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 一般社団法人キリスト教学校教育同盟

希望と喜びに生きる-新たな転換期に立つキリスト教学校-

一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

Assocition of Christian School in Japna Since 1910

キリスト教学校教育バックナンバー

東北・北海道地区
紅葉に囲まれて深められた豊かな学び
地区教育研究集会中高部会

浅野 純

 紅葉の美しい札幌にて二〇〇六年度の地区教育研究集会中高部会が十月二十六日から二十八日にかけて開催された。尚絅学院女子中学・高等学校長、小林孝男先生の「キリスト教教育に携わる」と題したメッセージの開会礼拝からプログラムが始まる。重い病の友人を助けようとする卒業生の働きのなかに見た「共に生きる」というキリスト教精神の結実の例が語られ、自分の弱さや欠けを通して明らかにされる主イエスの許し、支えを信じて、キリスト教教育に携わるとき、その働きが主のわざであることを心に留めて勤めを果たしたいとの「誇る者は主を誇れ」をテキストとした励ましに、キリスト教教育に携わる恵みと使命とを改めて心に刻みつつ、プログラムが始まった。

 地区代表理事・東北学院学院長の倉松功先生から、「今年度の同盟の主題である『幅広く深く学ぼうキリスト教学校の意味』を実践しながら公教育としてのキリスト教教育を担うための研鑽を深めていきたい」との力強い励ましを開会挨拶の言葉として戴いた後、名寄市立大学教授・北海道大学名誉教授の三島徳三先生の「現代に生きる新渡戸稲造―遠友夜学校・武士道・平和共存―」と題された講演が行われ、新渡戸稲造の札幌農学校時代から国際連盟事務次長に至るまでの生涯と、その業績の紹介を通して教育者としてのあるべき姿を示された。特に「新渡戸武士道」とも言うべきその思想が、現代に生かし得るメッセージを携えたものであるということを、参加者は興味深く受けとめ、活発な意見交換も交わされた。

 夕食後の聖書科部会では聖書科担当教師が集まり、「今、聖書の授業」という継続テーマに則した基督教独立学園高校の伊東良和先生からの「独立学園高校の聖書に関する学び」という題での話題提供を中心として、山里での共同生活を送りながらの学校生活ならではの特色ある豊かなキリスト教教育の一端を垣間見つつ、聖書科のカリキュラム編成や課外活動としての聖書の学びについての在り方を共有した。併せて参加各校の聖書科の授業や宗教活動についての近況報告も行われた。

 二日目のプログラムは今回の当番校、とわの森三愛高校の生徒と共に主を賛美する学校礼拝から始まる。宗教主任の榮忍先生の「新しい人にされる」という題の奨励は、キリストによって新しい命に招かれることから対立を越えた平和への道が開かれるという力強いメッセージであった。礼拝に引き続いて行われた欧州酪農研修旅行の結団式に出席した後、牛舎と畑の広大な酪農学園の敷地を散策を兼ねて移動。紅葉に囲まれた木造の研修棟にて三校の先生による学校報告が行われた。遺愛女子中学・高校は宗教主任の大崎敬子先生が礼拝を話題に取り上げ、その歴史から礼拝の実際、現状と課題に至るまでを話された。山形学院高校の生徒課長、赤井芳志剛先生は新校舎が与えられて新しく歩み始めた山形学院の紹介と生徒指導に関わる活動報告を通して生徒と教師の関係作りの方向性を投げかけられた。宮城学院中学・高校校長の伊藤香美子先生は、学院の教育について、特に学校改革への取り組みについて語るなかで、キリスト教主義学校教育全体に関わる課題を提供された。

 しばしのフリータイムが与えられた後、夕方から行われた教育研究委員会では教研中央委員会をはじめ同盟関係の活動報告に加えて、例年通り二〇〇七年度の地区中高部会研究集会についての協議を行った。主題は「幅広く深く学ぼうキリスト教学校の意味―キリスト教教育の本質と課題(13)―」とし、十月十八日~二十日の日程で東奥義塾高校を当番校として実施することを決定した。また合わせて地区総会に推薦する地区協議会役員の候補者の選出についての協議も行った。

 最終日は弘前学院聖愛中学・高校の安達正希先生(宗教主任)の礼拝で朝を迎えた。「主イエスとの出会い」と題された奨励から、ザアカイと主イエスの出会いをテキストに、主イエスを「上から」見るのではなく「下から」見上げ、共に主イエスにとらえられた者として、この世の価値観を超えたものを大切にしていかなければならないとの示唆を受ける。

 全体会は聖書科部会や教育研究委員会などの報告に続いて、参加者からの意見交換・話題提供が行われた。各校それぞれが現状に関わる多くの課題を投げかけたが、特に時宜にかなった話題として教育基本法に関わる学びや取り組みの必要性が確認された。

 閉会礼拝では東奥義塾高校の天野海走先生(宗教主事)から、「空の鳥・野の花をよく見なさい」の箇所をテキストに「気づきの感性」と題する奨励を受けた。植物の世話の基本が毎日の手入れ・観察・感動であるように、わたしたちは絶えず生徒のために「よく見て気づく」ことを怠らず、祈りつつ教育の場で働きたいという、力強いメッセージであった。

 地区理事の杉本拓先生から、教育をめぐる厳しい情勢のなかにあっても、キリスト教主義学校として日々怠らずに歩もうとの励ましと、この研究集会のために尽力された方々への謝辞が閉会挨拶として述べられ、閉会。それぞれ現場への帰途についた。参加者十一法人十五校より三十二名。特に実り豊かな研修のために会場と働きを提供してくださった当番校・とわの森三愛高校の方々に深く感謝したい。

〈北星学園女子中学校・高等学校宗教主任〉

キリスト教学校教育 2006年12月号3面