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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

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キリスト教学校教育バックナンバー

第49回小学校代表者研修会

同志社小学校の使命と目指すもの

新藤 啓二

 第四十九回小学校代表者研修会(佐藤勇委員長)が、一月二十三日(火)・二十四日(水)京都ガーデンパレスにて開催された。

 まず「同志社小学校の使命」と題して、同志社理事長(キリスト教学校教育同盟常任理事)野本真也先生による講演Ⅰが行われた。

 同志社小学校の設立は新島襄の志のひとつであった。新島は「基督(教)主義ノ学校ハ幼稚園ヨリ大学ニ至ル迄実ニ必用ノモノト信スレトモ、当時吾輩ノ力尚微々タリ、尽ク之ニ着手シ得サルベシ・・・」と言っている。

 新島は「同志社」を一八七五年八月、山本覚馬と共に結社した。この結社に事実上、共に加わったJ・D・デイヴィスは、同志社とは「同じ志をもつ者の結社」という意味であると述べている。新島はキリスト教を求め、キリスト教に出会った。これこそが新しい日本の重要な精神的支柱だと確信した。そして、聖書とキリスト教への関心があった新島の志を形成した要因は、「アメリカのキリスト者との出会い」、「キリスト主義学校と教会での学び」、「欧米の学校視察と教育制度研究」の三つである。

 新島襄の志を表すキーワードである「良心」(良心の全身に充満したる丈夫の起り来たらんことを望みて止まざるなり・横田安止宛書簡)や教育を表す「自責の杖」(一八八〇年四月十三日、同志社の第二寮で行われた朝礼に無届け欠席した学生の代わりに自らをむち打った。)、キリスト教理解を表す「愛」(耶蘇教ハ何ソト人問ハレタレハ答テ日ハン「愛以貫之」)について紹介された。

 新島襄の教えは、「人ひとりは大切である」、「真正の自由を守るべし」、「平素之宿志」(キリスト教伝道)であると説明され、新島の志を継承・共有させることが同志社小学校の使命であると考えている。

 また、校歌は同志社に関係の深いお二人に依頼することになり、作曲を大中恩氏に、作詞を谷川俊太郎氏にお願いした。

 翌日は同志社小学校に場所を変え「同志社小学校の目指すもの」と題して、同志社小学校校長鈴木直人先生による講演Ⅱが行われた。

 保護者の子どもの育て方において「受験学力など、現代の競争社会に打ち勝つ学力をつけさせることが大事」という考えと「人間として、包括的な人間力をつけることが大事」という考えの二極化がある。どちらの立場をとるかが問題なのではない。一番必要なことは、子どもが心身ともに健全な成長をとげることではないかと考える。

 現代日本の子どもの特徴としては、親の前で「いい子」を演じる子や親の目が届かなくなると豹変する子が増えているということである。そして、この子どもの裏の面を保護者は知らないことが多い。

 原因としては、子どもを取り巻く環境の変化がある。少子化、核家族化、社会の急激な変化(多忙な社会生活)、高学歴社会、商業ベースのみを追究する商品の氾濫、情報化社会(無責任なマスコミ報道)、競争社会からくる利己主義(自己中心主義)、教師の質の低下、遊び場所や自然の減少などがあげられる。

 大切なことは、親の都合や価値観を子どもに押しつけるのではなく、子どもと向き合い、子どもの持つ本来の力を理解し、引き出していくことである。

 経済協力開発機構(OECD)や国際教育到達度評価学会(IEA)の調査によると読解力や数学的活用力、学習意欲の低下が報告されている。その原因は、勉強時間の不足ではなく、勉強に対する意欲(モチベーション)が低いところに問題があると考えられている。

 初等教育は、勉強時間の延長、教え方の技術といった問題よりも、教師が一人ひとりの子どもと真に向き合い、一人の人間として大切に扱い、見守り、関わり合うことが何よりも大事である。

 講演の後、自由空間の広がる校舎内を見学し、半自校式の温かな給食をいただいた。

 この研修会で同志社小学校の建学の精神や開校までの経緯を野本先生に、二日目には校舎見学を含めて小学校の具体的な教育について鈴木先生に伺うことができ、豊かな学びの時を与えられました。感謝をもってご報告する。

〈捜真小学校教頭〉

キリスト教学校教育 2007年4月号2面