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一般社団法人キリスト教学校教育同盟 Association of Christian Schools in Japan Since 1910

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キリスト教学校教育バックナンバー

第95回総会 シンポジウムまとめ
「まったなし」のキリスト教学校すべてに共通する祈りの課題

水口 洋

 今回の総会の特別プログラムとして、「キリスト教学校の将来に向けて―キリスト教学校の担い手をどうのように育成するか」というテーマでシンポジウムが行われた。今日のキリスト教学校が共通に抱えている、キリスト者教員をどのように確保し、どのように育成していくかという課題について、同盟の総会という場で、問題を共有出来た意義深い時間であった。

 四人の発題の先生方の最初に、山形学院高等学校長の北垣俊一先生が、地方の学校の責任者としてキリスト者を確保する難しさの中、建学の精神を浸透させることが大きな問題である現実を見据えつつ、指導者が良きリーダーシップを発揮することの重要性を自らの実践をもとに強調された。

 次に国際基督教大学教授の町田健一先生は、大学での養成の問題、中高の採用と研修の問題などを、教育学科の学生と多く関わってこられた経験をもとに、問題点を含めて率直に具体的に提言された。

 三人目の立教女学院中学校・高等学校校長の平塚敬一先生は、教研の中高部会委員長として体験した全国の同盟各校の現状を踏まえて、キリスト教教育の担い手を育成することを、同盟全体で協力支援していくことの必要性について、心を込めて語られた。

 最後に東京女子大学学長の湊晶子先生は、困難な時代にキリスト教教育の本質を踏まえつつ、指導的立場にある者がしっかりと信仰的姿勢を示していくことの大切さを、具体的な実践を披露しながら力強く語られた。(それぞれの発題内容の詳細は、この紙面に掲載されている)

 さらに、後継者養成プロジェクト委員会の委員長である磯貝暁成先生(関西学院初等部設置準備室長)からの委員会報告があり、長年の課題であった後継者養成が昨年の総会から動き出したことの経過報告と、この課題が同盟全体の緊急かつ切実な問題であるとの共通認識を持つ必要についてのアッピールがなされた。その後、発題者からの若干の追加説明を受け、休憩となった。

 後半は、発題者に対する質疑応答の時間となった。多くの賛同意見と共に、地域格差の問題、学校における福音伝道の問題、団塊の世代退職後の不安、新教育基本法に見る政治的な動きへの対応、女性のリーダーシップへの期待など、キリスト教学校が抱えている切実な問題に対する意見が出された。また、キリスト教教育を担うためには事務職員の存在が重要であるという指摘、キリスト者と非キリスト者が同じ地平に立って問題を共有していくことの必要、キリスト者自身の持つ問題性など、フロアーからの指摘が続いた。

 「二十年後の総会の時、果たしてキリスト教学校はその精神を堅持したまま存続しているだろうか」という問題提起から始まったシンポジウムは、三時間を超える長時間にわたる議論となった。しかし、その長さを感じさせない充実した時となった。司会者の席から見たフロアーの空気は、まさに皆でこの問題を共に考えようとしていることを感じさせた。それは、発題者がそれぞれの現場で苦闘しながら打ち出した、明確な問題提起が土台となったシンポジウムであり、またこの課題がまさに「まったなし」のキリスト教学校すべてに共通する祈りの課題であったからであろう。

 主催校であるフェリス女学院が「キリスト教学校教育に情熱と使命を感じて携わる働き人をどのように育成し確保するかは、キリスト教学校の将来にとっての重要な課題」であるとし、このシンポジウムを企画したことは、新しい総会のあり方を指し示す画期的なものとなったように思われる。

〈玉川聖学院中等部・高等部部長〉

キリスト教学校教育 2007年7月号6面